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短歌の部屋


短歌2011


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1101 回る回る目当ての娘まであと五人
フォークダンスの曲よ止まるな


NHK短歌(201113日教育テレビ放映)

入選 題思い出(テーマ) 選者加藤治郎氏

選者評フォークダンスが異性に触れる殆ど唯一の機会。そういう時期の思い出である。胸の高鳴りが「目当て」「あと五人」「曲よ止まるな」と随所に噴出している。




1102 泥炭地太古の森の火は燃えて
カリマンタンに煙のぼりぬ


NHK短歌(201127日教育テレビ放映)

入選 題火 選者米川千嘉子氏

選者評カリマンタン(インドネシア領ボルネオ島)では泥炭地層が自然発火して燃えている。地層のもとになった太古の森そのものが燃えているようなのだ。




1103 ほろ酔ひの夢に見し妻若かりき
髪なびかせて貝に乗りたり


NHK短歌(2011月号掲載)

佳作 題夢(テーマ) 選者加藤治郎氏




1104 麦わらに包みてありし納豆は
わらべの頃のあさげのかをり


東海歌壇(201119日朝日新聞掲載)

入選 題自由 選者岡井隆氏




1105 天井にやもり三匹住まはせて
虫退治せしバングラの宿


ジパング倶楽部会報(2011月号掲載)

入選 題自由 選者 篠弘氏

選者評インド東部に隣接するバングラデシュ。国土の大半が、大河川の肥沃なデルタ地帯。出張した折の体験で、三匹のやもりが活躍してくれたことが忘れられない。




1106 玉手箱ひらきてみれば
死の灰の漂ふ沙漠にひとり佇む


角川公募短歌館(月刊「短歌」2011月号掲載)

佳作 題自由 選者山埜井喜美枝氏




1107 我が無事を世界の友は
各々の信ずる神に祈りたまひき


角川短歌「題詠」(月刊「短歌」2011月号掲載)

入選 題絆  選者 秋山佐知子氏

選者評世界中の友の祈り。「各々の信ずる神」が世界観を表す。




1108 母鶏の雛呼ぶ声は人に似て
一オクターブ高くなりたり


NHK短歌(2011月号掲載)

佳作 題呼ぶ  選者花山多佳子氏





1109
わたすげ
綿菅の波立つ宵に汝を抱き
男体山の祭はじまる


角川全国短歌大賞(月刊「短歌」2011月号掲載)

佳作 題祭 選者 小塩卓哉氏




1110
りんごひとつかごからとれば
テーブルごとひつくりかへりさうなセザンヌ


角川公募短歌館(月刊「短歌」2011月号掲載)

特選 題自由 選者古谷智子氏

選者評ひらがなとカタカナだけで量感豊かなセザンヌの名画を表現したところが見事だ。絵の中のたっぷりと盛られたリンゴの籠の絶妙なバランスが、手触り豊かに読者に伝達されている。




1111 ひた走る深夜特急「北斗星」
途中の駅の名前知らない


角川短歌「題詠」(月刊「短歌」2011月号掲載)

入選 題駅  選者 浜田康敬氏

選者評この深夜特急は上野〜札幌間を15時間余かけて走る列車で、終点までは途中駅の存在など必要ないのだ。




1112 我と共に世界巡りし黒皮の鞄
傷つき納戸に眠る


NHK短歌(201110月号掲載)

佳作 題眠る  選者花山多佳子氏




1113 思ひ出に錘をつけて船に乗る
夕陽の海に沈めるために


NHK短歌(201110月号掲載)

佳作 題海(湖) 選者来嶋靖生氏




1114 聴き初めし頃は葡萄の、
聴き込めし後はワインの香りすショパン


角川公募短歌館(月刊「短歌」201111月号掲載)

佳作 題自由 選者 坂井修一氏





1115
                  ラビリンス
パソコンは大海原の迷路
龍宮城には毒蛇もゐる


NHK短歌(201112月号掲載)

佳作 題パソコン  選者坂井修一氏






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